| Summary: | Amazon.co.jp: サラリーマンなら1度や2度は転職を考えることがあるだろう。『辞表撤回』が転職を思いとどまることによって仕事の醍醐味を知った男の物語なら、本書は転職によって成功をつかんだ男の物語。自転車製造・販売会社「ホダカ」の創業者である武田光司が実名のままモデルとなっている。新聞記者志望だった武田は志望企業に落ちて放送局の記者になったものの上司とのソリが合わず、営業への異動を願い出た。反骨精神の旺盛な武田は取引停止になっていた日産自動車との契約を復活させるなどトップ営業マンに躍り出る。たが「電波ジャーナリズムの営業マンで終わりたくない」と入社10年で転職に踏み切った。どんな事業を起こすか決めかねていたところに舞い込んだのが台湾製自転車の輸入販売の話。武田は持ち前のパワーと人脈を最大に生かして販路をひらく。が、輸入した自転車は不良品の続出で給料はおろか倉庫代も出ない。親会社からは自転車販売事業撤退を言い渡されるが、武田は逆に奮起して会社を設立。その創業期から幾多の波を乗り越えて経営者と会社が成長を遂げていく。営業力はありながらも放送局時代には鼻っ柱が強く上司に正面から絡んでいた武田だが、起業家として苦労を重ねるほどに包容力を増していく。商売を通じ人情の機微に触れることによって人間が豊かになれることを著者は武田を例に描いている。経済小説としては「ホダカ」の最大顧客であるイトーヨーカ堂の描写が見逃せない。(松浦恭子) |